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策定の経緯
ASR投入施設活用率は、サーマルリサイクルを含むASR再資源化をリサイクルとして妥当であると判断するための指標として策定されました。ASRは、使用済自動車の処理・リサイクルにおいて多量に発生する廃棄物です。ASRは、すでに有価物を回収された残さであるという性質上、そのリサイクルには困難が伴うものであり、他の廃棄物のようなマテリアルリサイクル中心の処理は難しいものと考えられます。使用済自動車の再資源化等に関する法律(以下、「自動車リサイクル法」という。)においても、「再資源化」にはリユース、マテリアルリサイクルに加えてサーマルリサイクルも含むものとしています(第2条第9項)。
こうしたASRのサーマルリサイクルを含む再資源化がリサイクルとして妥当であると社会一般に認められるための条件とはどのようなものであるかについて、経済産業省と環境省では諮問機関である産業構造審議会(産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会自動車リサイクルWG特定再資源化等物品関係検討タスクフォース、委員長:早稲田大学理工学部教授 永田勝也)並びに中央環境審議会(中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会自動車リサイクル専門委員会特定再資源化等物品関係検討小委員会、委員長:早稲田大学理工学部教授 永田勝也)において有識者による検討を行ってきました。「ASR投入施設活用率」は、これらの機関での結論として、社会一般に理解されやすく、かつサーマルリサイクルとマテリアルリサイクルを統合的に評価する指標として確立されたものです。 -
ASR投入施設活用率の基本的な考え方
ASR投入施設活用率は、回収資源の合計と投入物の合計の比率として算出します。
ASR投入施設活用率は、当該施設への投入(エネルギー+マテリアル)と回収(利用)資源(エネルギー+マテリアル)の比率として算出します。投入としては、ASRの他に、同時に処理される廃棄物や鉱石、プロセス上必要に応じて消費される石炭、石油、天然ガス、石灰石等があります。回収(利用)としては、回収電力、回収熱、回収ガス(冷ガス)、スラグ、金属(鉄、銅、アルミ等)等があります。計算の際、これらの投入物、回収(利用)物はそれぞれエネルギーとマテリアルに分割し、ASR重量に換算します。
なお、電力については、原則として投入側では計上せず、回収側での発電端電力量として計算します。これは、発電された電力は施設の運転に自己消費される場合が多いことから、出口側の量として一括計上することが手法として簡便であると考えられるためです。
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計算式の解説
ASR投入施設活用率での、エネルギー、マテリアルそれぞれの計算手順を以下に示します。
(3─1)エネルギー(回収エネルギー及び投入可燃物等)
エネルギーはASR低位発熱量を基準としてASR重量に換算します。
(3─2)マテリアル(回収マテリアル、投入灰分)
マテリアルはそのままの重量で計算します。
(3─1)エネルギーのASR換算ASR投入施設活用率では、投入される可燃分等、並びに回収されるエネルギー、可燃性物質は、その低位発熱量を、施設で投入している(あるいはその予定の)ASR可燃分等1tあたりの低位発熱量を基準としてASR重量に換算します。
なお、回収電力については、我が国の商業発電における発電端効率を考慮し、その元となっている一次エネルギー(石油や石炭等)に換算します。
1)投入エネルギーの計算式2)回収(利用)エネルギーの計算式- ※1 電力を一次エネルギーに換算するため、現状の商用火力発電の発電効率0.4を用いる
- ※2 灰分の加熱、融解等に要する熱量をいう
分解ガスや固形燃料などの可燃分起源の回収資源についても、エネルギーでの回収と同様にASR可燃分等低位発熱量での換算を行います。
(3─2)マテリアルの計算投入物のうちの灰分や、回収物のうちの金属及びスラグ等の灰分起因の資源については、特に換算せずにその重量のまま計算します。
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計算に関するその他の規則
ASR投入施設活用率の算出にあたり、その他の留意すべき事項としては以下のとおりです。
(4─1)回収エネルギーの自己利用
循環利用熱は計算に含めません。
(4─2)マイナスの発熱量の取り扱い
汚泥等のマイナスの発熱量を投入する場合でも、投入側で計算します。
(4─3)投入電力
投入電力は計算に含めません。
(4─4)ASRとの関連性の低い回収物について
ASRに由来しないと考えられる回収物は計算に含めません。
(4─1)回収エネルギーの自己利用(循環利用熱は計算に含めない)回収されたエネルギーのうち、施設の運転に本質的に必要な用途として利用されている(循環利用熱)ものは、回収量には含めません。熱として処理プロセスに直接戻るものがこれにあたります。それ以外の施設内外での利用は回収(節約)量に含めます。
(4─2)マイナスの発熱量の取り扱い(投入側で計算する)廃液、汚泥など、マイナスの低位発熱量をもつ廃棄物を投入している場合、投入エネルギーのマイナス値として計算します。これは、ASRや廃棄物の可燃分等の計算において、水分によるマイナスを含めた「低位発熱量」を用いていることと整合をはかるためです。
(4─3)投入電力(計算に含めない)施設に投入される電力は、原則として投入側の計算に含めません。これは、発電された電力は施設の運転に自己消費される場合が多いこと、また事業者が購入している電力がASR投入施設以外にも消費されている場合その内訳を求めることが困難であるから、回収側の量として一括計上することが手法として簡便であると考えられるためです。
(4─4)ASRとの関連性の低い回収物について(回収物のうち、ASRとの関連性の低いものは計算から除外します)ASR以外の廃棄物や鉱石等を大量に投入・処理している施設からの回収物には、組成からみてASRの成分がほとんど寄与していないと考えられるものがあります。こうした回収物を含めたままASR投入施設活用率を算出することは、「ASRのリサイクル状況」を評価するという観点からは不適切と考えられるので、計算から除外します。
具体的には以下の2条件を満たす回収物は計算から除外するものとします。
A:投入物中のASRの重量比が50%未満であること
ASRが投入物の「副」である施設を対象とします。
B:回収物の由来する元素のASR中の含有率が1%未満であること
回収物が複数の元素に由来する場合は含有率合計が1%未満とします。ASR投入施設活用率は有効数字2ケタで表現されるので、ASRのみのリサイクルであるとした場合、合計含有率1%未満の成分は結果にほとんど影響を及ぼさないと考えられることから、これを除外の基準とします。
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ASR投入施設活用率による認定基準
ASR投入施設活用率による認定基準は「0.40」(平成15年現在)。
平成15年現在、ASR投入施設活用率による認定基準は、「0.40」となっています。この値は、リサイクルとして社会的に認められうるレベルであるに相当すると考えられるもので、積極的なサーマルリサイクルを行っている一般廃棄物焼却施設の水準に基づき設定されたものです。この値を達成しているASR投入施設は、廃棄物リサイクル施設全体から見て高度なリサイクル効率を有していると考えられます。
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計算事例
(6─1)計算事例 タイプ1
(6─2)計算事例 タイプ2
(6─3)計算事例 タイプ3
(6─4)計算事例 タイプ4
(6─5)計算事例 タイプ5
(6─1)計算事例 タイプ1- ・非鉄金属製錬プロセスにASRを投入し、そのうちの可燃分等を燃料代替として発電・蒸気回収及び灰分の融解に、また灰分を非鉄金属・スラグ原料として活用することを想定しています。
- ・ASR以外の投入物として、鉱石及び石炭を想定しています。
- ・想定条件:発電端効率約10%、灰分の加熱+融解熱:200Mcal /t、灰分からのスラグ等の回収率約90%
(6─2)計算事例 タイプ2- ・廃棄物焼却炉にASRを投入し、可燃分等のエネルギーを電力及び灰分の融解に、また灰分をスラグ原料として活用することを想定しています。
- ・ASR以外の投入物として、その他の廃棄物を想定しています。
- ・想定条件:発電端効率約10%、灰分の加熱+融解熱:200Mcal /t、灰分からのスラグ等の回収率約90%
(6─3)計算事例 タイプ3- ・ガス化炉にASRを投入し、可燃分等のエネルギーを燃料ガスとして、また灰分を金属原料として活用することを想定しています。
- ・投入物はASRのみを想定しています。
- ・想定条件:冷ガス効率約50%、灰分からのマテリアル等の回収率約90%
(6─4)計算事例 タイプ4- ・ガス化炉にASRを投入し、可燃分等はガス化燃焼により発電及び灰分の融解、また灰分をスラグ原料として活用することを想定しています。
- ・ASR以外の投入物として、石炭を想定しています。
- ・想定条件:発電端効率約10%、灰分の加熱+融解熱:200Mcal /t、灰分からのスラグ等の回収率約90%
(6─5)計算事例 タイプ5- ・ASRを投入し、可燃分等はマテリアルリサイクル向けの回収素材及び固形燃料、また灰分を非鉄金属・ガラス原料として活用することを想定しています。
- ・ASR以外の投入物として、混合材料を想定しています。
- ・想定条件:可燃分からの素材回収は重量比で50%、可燃分からの固形燃料回収は重量比で25%、灰分からの金属等の回収率約90%